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2007 年7 月15 日

親子の対話

 少年の非行問題が起きたとき、よく親子の会話がないからだ、と言う。そして、よく親子で話し合ってくださいと言われる。

 ところで、親子の会話・話し合いって何だろう?何を、どうすることが「会話・話し合いをした」ということになるのだろう?
 「今日学校でどうだった?」「こんなことがあったよ」、あるいは「お前、どう思ってるんだ」「すまないことをしたと思っています。」「これからどうするんだ?」「もう二度とこんなことはしません」これで親子の会話、話し合いをしたということになるのだろうか。

 何をしたことが悪かったのか、それをしたことがどうして悪いことなのか、それをするときは悪いことだとは思っていなかったのか、悪いことだと思っていたのにどうしてしてしまったのか、これから同じような場面に遭遇したときはどうするのか、本当にそうできるのか、また同じ過ちをしたときはどう責任をとるのか、親はそれに対してどう関わるのか。
 多分、こんなことを話して、お互いに問題点を共有し理解しあうことが求められているのだろう。

 ところで、こんな会話を、親子で本当にできるのだろうか。
 そもそも大人であっても、そんなことを考えられる人が一体どれだけいるのだろう。ちなみに、私が刑事事件を弁護して、被疑者・被告人となった人に対していきなり法廷で質問して、答えられた人がいただろうか、とふと思ってみたりする。会話をするということの具体的、意味合いを示さないと、誰も本当に会話をすることはできないし、偽物の会話をして「会話・対話」をしたと錯覚するだけではないか。そして、親はあれだけ話したのにどうして分かってもらえないのかと嘆き、子供は何も対話はしていないと親を恨むだけに終わるのではないだろうか。
REI1906



投稿者:ゆかわat 00 :32 | 日記 | コメント(0 )

年金記録第三者委員会〜行政不服審査と苦情処理


年金記録第三者委員会が動き始めた。7月14日付日経朝刊によると、「社会保険庁に再審査を求めていたケースなど36件を審議した結果、15件について記録訂正を認める初めての判断を下した。」という。
社会保険庁に再審査を求めていたというのは不正確で、正確には社会保険審査会に対する年金不支給裁定に対する再審査請求である。これは行政不服審査法、国民年金保険法、厚生年金保険法に基づく行政不服審査だ。それに対して、年金記録第三者委員会と言うのは、総務省に設置された苦情あっせん機関だ。行政法の理解としては、行政処分に対する正式の救済(不服申立て)の手続が社会保険審査会に対する審査請求であって、総務省の苦情あっせんは、まさに単なる苦情処理の手続に過ぎず、正式の行政不服審査手続の俎上に乗っているケースについて苦情処理が口出しすることはないし、普通は、そんなことをしても聞き入れられない。ところが、年金記録救済に関しては、苦情処理が行政不服審査手続よりも優先しているということだから、行政法をかじっている人間としては、驚く他はない。年金に関することは厚生労働省の管轄なのに総務省が口出しをしてその「勧告」に社会保険庁が従うというのも、行政法のルールである行政担任原則破壊だ。しかも、この第三者委員会の「認定」は、過去の社会保険審査会の裁決をも全面的に覆すことになるものだから、裁決の不可争性という行政法のルールも関係ない。要は、国会が決めれば、行政法の理解なんて、そっちのけだ。そうやって考えると、行政法なんて、国会が何もしないときに初めて登場する補欠にすぎないし、行政法は救済の足かせにすぎない。

 しかも、現在、総務省で行政不服審査法の改正の検討をしているが、この年金記録第三者委員会の経験に基づけば、行政不服審査法の改正なんて必要なくて、ただ行政苦情処理制度さえ充実すればそれで良いと言うことになる。これは、私の持論をそのまま実践するものだが、行政不服審査法検討会からすると、甚だ面白くないことだろう。

 さらに言えば、年金記録第三者委員会で救済されることになった人たちは、果たして審査請求の他に第三者委員会に苦情申立をしていたのだろうか。仮に第三者委員会が勝手に記録を審査したのだとすれば、個人情報保護法の見地からも問題がありそうだ。

 いずれにしても、これで明らかになったのは、国民の権利利益の救済のために弁護士の出番になるのは、国会が何もしないときに限られるということであり、その場合も様々な行政法の原理に照らして不可能なことも、国会にかかれば何でもOKということだ。国政選挙も、たまには役に立つ。

投稿者:ゆかわat 00 :23 | ビジネス | コメント(1 )

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